賃貸中の不動産を譲渡する場合には、入居者と交渉して退去してもらってから譲渡する方法と、現況のまま、入居者との契約書の内容を引き継いで譲渡する方法があり、これを居抜きといいます。  居抜き物件の譲渡の場合、売主と買主の間だけではなく、入居者との契約もかかわってくるので、特に債務の引継ぎや売買の日付に注意が必要です。

 債務の引継ぎとは、入居者から預かっている敷金返還債務のことを言い、将来退去した時に返還する敷金です。居抜きの売買の場合、敷金を預かっている元のオーナーではなく、退去した時に所有しているオーナーが返還するので、売買代金とは別に新オーナーに託しておく必要があります。たとえば、売買代金が3千万円で、現在の入居者から敷金20万円を預かっている場合、買い主は20万円を手元に残して、2980万円を売主に支払います。

 もう一つ、賃貸中の物件の売買の場合は、物件の引き渡し日も重要です。家賃収入や管理費などの支出も、引き渡し日を境に清算が必要になります。  通常、入居者は前家賃といって、翌月分の賃料を月末までに支払っているので、既に受け取っている家賃収入のうち、引き渡し日以降の日割り分は新しいオーナーと清算することになります。  売買契約に先立って、売り手と買い手の間で、賃貸契約書で、清算するべき収入や支出について確認しましょう。